鳥類のPGCが血管へ入る様式についての論文を発表しました(21,03,21)

論文発表

 鳥類胚のPGCは血管内を移動路として使用します。これまで、PGCが生殖三日月環と呼ばれる領域に存在する時期に血管の中に「移動」すると予想されていましたが、正確なタイミングや移動の様式についてはわかっていませんでした。今回我々はその問題を明らかにするために、ウズラ胚を用いてPGCと血管内皮細胞の分布パターンを免疫染色法によって詳細に調べました。結果、生殖三日月環の側方の領域において発生の早い時期からPGCと血管内皮細胞が近接して存在していることがわかりました。この時期、血管内皮細胞はまだ血管形成(Vasculogenesis)の途上にあり、単体あるいは数個の集団で存在しています(血管のチューブ構造などはまだ構築されていません)。その後、血管内皮細胞とPGCが初めてコンタクトします。それは興味深いことに、単体あるいは数個の内皮細胞によってPGCが「飲み込まれた」ようなコンタクト像でした(写真:赤がPGC、緑が血管内皮細胞)。その後、血管内皮細胞の集団はPGCを中に抱えながら寄り集まってコード化、チューブ化と進み血管ネットワークを形成します。つまりPGCの血管内への「移動」は、血管内に積極的に侵入するというよりは、血管形成に紛れて居場所を変える、という表現が正しいものでした。当初は「PGCもがん細胞のように血管壁を突き破って血管内に侵入するもの」と予想していたのでこの結果は大きな驚きでありました。本論文は2021年3月21日、Developmental Dynamicsに掲載されました