単一細胞解析により、ニワトリ始原生殖細胞の新しい細胞多様性を発見 ― 体内PGCと培養PGCのトランスクリプトームを比較 ―

当研究室の研究成果が、発生生物学分野の国際誌 Development, Growth & Differentiation に掲載されました。

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/dgd.70049

本研究の一部は文部科学省「先進ゲノム支援」の支援のもと、東京大学の鈴木穣先生の研究グループ、九州大学の平川英樹先生の研究グループとの共同研究として進められました。

本研究では、ニワトリ始原生殖細胞(Primordial Germ Cells: PGC)について、体内に存在するPGCと培養下で維持されるPGCの遺伝子発現状態を、SMART-seq を用いた単一細胞RNAシーケンスにより比較解析しました。PGCは次世代へ遺伝情報を伝える生殖細胞の起源となる細胞であり、その発生機構の理解は、生殖細胞研究のみならず、遺伝子改変鳥類の作製や生物資源保存などの応用研究にも重要です。

解析の結果、内在性の(生体内で発生する自前の)PGCと培養PGCの間には明確に遺伝子発現状態の違いが存在すること、さらに培養PGCが培養環境に適応する過程で細胞状態が段階的に変化することが明らかになりました。また、内在性のPGC集団自体も、遺伝子発現状態の異なるものたちから構成されていることがわかりました。これらの結果は、これまで比較的均一な細胞集団かもしれないと考えられてきたPGCにおいて、発生段階や培養環境に応じた細胞多様性(heterogeneity)が存在する可能性を示しています。

本研究からPGCの細胞状態制御や培養適応を理解するうえで重要な萌芽がいくつも得られたことと、本研究が長年の盟友である林良樹さんとの本格的な「初共演」というところが、個人的にめっちゃ感慨深いです。

文責:齋藤大介