鳥類胚を用いてPGC研究を行うメリット

鳥類胚を用いてPGC研究を行うメリット

 2015年、イギリスのMcGrew博士らのグループによってニワトリ胚PGCを安定的に培養できる方法が報告されました。現在のところPGCが長期的に培養できる動物はニワトリ(最近ニジマスも?)に限られていることからもわかるように、これはなかなかにすごい技術です。PGCが培養できるということは、この細胞に簡単に遺伝子操作ができるということを意味します。例えば、EGFPを発現させてこの細胞を「視える化」させてやったり、ある遺伝子を強制的に発現させたりノックダウン・ノックアウトさせることもできます。このようにニワトリではPGCが培養できるというメリットはとても大きいことです。

 また先に述べた通り、実験材料としての鳥類胚の大きな利点は、「殻を開けさえすれば簡単に観察できる」ことです。また、観察だけではなく、細胞を外から移植することも簡単にできます。このニワトリ胚の特質と培養PGCの技術を組み合わせる、つまり、EGFPで視える化した培養PGCをニワトリ胚の血管などに移植するなどによって独創的な解析系が実現します。我々はPGCの移動機構や性質維持機構を解明するためにこのような解析系を駆使して研究を進めています。

 また、PGCの培養技術はトランスジェニック個体の作成に直結する技術です。このような流れです。遺伝子改変したPGCをニワトリ胚に移植し、その移植した個体の生殖腺にPGCを定着させます。次に個体を性成熟させて、配偶子を産生させてそれを用いて遺伝子改変された次世代を作るということです。トランスジェニック鳥類ができればイメージングの切れ味はさらに格段に上がります。そのような理由から我々はトランスジェニック個体の作成も視野に研究を展開しています。