なぜ鳥類胚が生殖細胞研究に適しているのか
研究を進める上では、「何を研究するか」と同じくらい、「どの動物を使うか」が重要です。
私たちが鳥類胚を研究対象としている最大の理由は、生殖細胞を「生きたまま操作し、生きたまま観察できる」数少ない実験系だからです。
鳥類胚では、卵殻を開くだけで発生中の胚を直接観察することができます。さらに、培養したPGCや他の細胞を血管内へ移植し、その後の移動や分化、生殖腺への定着までを生体内でリアルタイムに解析できます。このようなライブイメージングと細胞移植を組み合わせた解析は、鳥類胚ならではの大きな強みです。
さらに、ニワトリではPGCを長期間培養できるため、培養下で遺伝子導入やゲノム編集を行った後、それらのPGCを胚へ戻して解析することができます。私たちの研究室では、蛍光レポーター細胞、遺伝子ノックアウト細胞、シグナルレポーター細胞などを作製し、生体内での細胞挙動を解析しています。
こうした技術は、遺伝子改変ニワトリの作製にもつながります。現在では、遺伝子改変したPGCからトランスジェニックニワトリを作製し、その個体を用いて発生や細胞動態を解析することが可能になっています。私たちは、生殖細胞研究だけでなく、発生生物学や細胞生物学に利用できる新たなトランスジェニック系統の開発にも取り組んでいます。
鳥類胚は、「培養できる」「操作できる」「生体で観察できる」「次世代へつなげられる」という四つの特徴を兼ね備えた極めてユニークなモデル動物です。
私たちは、鳥類を研究したいから鳥類を使っているのではありません。生殖細胞という問いに答えるために、最も適したモデルとして鳥類を選んでいます。その強みを最大限に生かし、生殖細胞の本質に迫る研究を進めています。。そのような理由から我々はトランスジェニック個体の作成も視野に研究を展開しています。
