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最近のトピックス      

最近のトピックス

私たちの研究室で得られた最新の研究成果について紹介します。

動物の神経伝達調節因子が植物の気孔応答を制御することを発見(2013.8.15)

Ine 気孔は、高度の環境情報処理機構によって常に成長・生存に最適な状態を保つようにその開閉が調節されています。この調節を担うのは、気孔細胞(孔辺細胞)内の膨圧を作り出すプロトンポンプです。私たちは、大気中CO2への感応に異常をもつモデル植物シロイヌナズナ変異株の解析から、動物の神経伝達を制御する因子MUNC-13と同じ構造をもつタンパク質、PATROL1を発見しました。本研究成果は英国の国際学術雑誌 Nature Communications に掲載されました(→論文情報)。

 PATROL1因子は、光や乾燥などの環境変化にあわせて、孔辺細胞の細胞膜の近辺を動き回ります。この因子の挙動はプロトンポンプの細胞内から細胞膜 上への配置移動、あるいはその逆の撤収移動と一致しています。このような観察から、PATROL1がプロトンポンプが必要とされる時に細胞膜に並べたり、 逆に必要でなくなった場合には回収したりする機能をもっていることが推測されました。例えば、光環境では光合成を行うために積極的にCO
2を 取り入れたいために気孔は大きく開きます。その場合には、PATROL1がプロトンポンプを短時間のうちに細胞膜に配置させます。一方、乾燥などによって 体内からの水分の放出を防がなければならない場合には、プロトンポンプをその一部を残して細胞膜から撤去します。 従来のプロトンポンプの研究は、ポンプそのものの活性化メカニズムに関してのものがほとんどで、そのメカニズムは一般の教科書などでも詳しく解説されてい ます。しかし、今回発見されたようなタイプの調節機構が存在することは驚くべきことであり、さらに、その機構の鍵を握っている因子が動物の神経情報伝達の “要”となるような因子であったことは、植物と動物の進化の過程でどのような経緯があったのかを考えるうえでも大変興味深いことです。

 現在、PATROL1遺伝子を過剰に発現させた植物体ではどのようなことが起きるか、さらに研究を続けています。そのような植物体は、低濃度CO
2や光による気孔開孔が増強されており、光合成活性が上昇し、その結果バイオマス生産が促進されることが分かりました(上図)。これまでの気孔エンジニアリングの試みにおいて、このようなバイオマス増産に成功した例はありません。PATROL1過剰発現体は、高CO2、 暗条件、乾燥などの多重環境情報を精確に処理し、それに基づいた的確な気孔応答を行うことができるということが分かりました。樹木や作物を含む多くの高等 植物でPATROL1遺伝子が存在していることから、この遺伝子を活用することによって、作物や樹木のバイオマスの増産の新しいアプローチが可能になるか もしれません。なお、この研究は、8月1日(木)付の朝日新聞 朝刊(全国版)で取り上げられました(→掲載情報)。