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Naiyou
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研究内容      

脂肪酸合成を介した環境応答の分子機構

    植物細胞の生体膜を形づくる脂質は、複数の二重結合をもつ多不飽和脂肪酸を特徴的に多く含んでいます。2つ、3つの二重結合をもつ脂肪酸は、それぞれ「ジ エン脂肪酸」(18:2, 16:2)、「トリエン脂肪酸」(18:3, 16:3)と総称されますが(図1)、これらの脂肪酸の量比は、生育環境に応じて大きく変動します。われわれは、これらの脂肪酸が植物の環境ストレス、と りわけ近年問題となっている地球温暖化にともなう高温ストレスへの適応に、どのような役割を果たしているかを解明するための研究を進めてきました。

    ジエン脂肪酸からトリエン脂肪酸への変換(不飽和化)は、「ω-3 デサチュラーゼ」とよばれる植物に特有の酵素によって触媒されます。われわれはトリエン脂肪酸の量が、高温環境において顕著に減少することに着目し、この 酵素の活性を人為的に低減させることにより、モデル実験植物であるタバコやシロイヌナズナにおいて、高温耐性を飛躍的に強化できることを実証しました(図 2)(Murakami et al., Science 287: 476-479, 2000: ESI の引用回数で関連分野のトップ1%以内に入った論文;総説としてIba, Annu. Rev. Plant Biol. 53: 225-245, 2002を参照)。現在はこの技術を利用し、近未来に予想される高温環境において、品質や収穫量の低下を防ぐことのできる、有用農林作物の開発に向けた研究を進めています。