第21回九州大学理学部生物学科公開講座

【日時】2022年8月12日(金)13:30〜16:00
【場所】オンライン同時配信
【対象】高校生および市民
【定員】約200名
【参加費】無料
【主催】九州大学大学院理学研究院・生物科学部門
【連絡先】生物学科教育支援室(担当 中條信成; 092-802-4269)
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講演内容

高校生の受講者が多いため、最初に九州大学理学部生物学科の紹介を行った後に以下の2名の先生方による講演を行います。

バッタに隠された奇妙な事実
立田 晴記(生態科学研究室・教授) TATSUTA Haruki, Professor

「フキバッタ」という昆虫を知っていますか?日本には22種のフキバッタが生息していますが,北海道に生息するサッポロフキバッタは,大変珍しい,同じ種内でも全く異なる性を決定する仕組みを持つことがわかっています.本種の染色体の構造や,染色体に含まれる遺伝子の位置や大きさを調べたところ,驚くほどのさまざまな変異が蓄積されていることが明らかになりました(通常は種や性で染色体の形や数が一定です).本種では性染色体(X染色体)と常染色体の間に転座(染色体の構造変化)が生じることで,新たな性決定システムを獲得した集団が同種内に存在します.これまで実施してきた野外調査から,異なる染色体を持つ個体が交雑している地域を発見しました.今回の講演では日本のフキバッタの多様性と,サッポロフキバッタで明らかになってきた奇妙な事実をお話するとともに,今後の研究展望についても触れたいと思います.
図の説明:(A)北海道に生息するサッポロフキバッタ,(B)転座が生じる前の染色体,(C)転座を起こした集団で見られる染色体(矢印は転座後の染色体を示す)

ビッグデータを使って脳の仕組みを読み解く
藤原 学(分子遺伝学研究室・准教授) FUJIWARA Manabi, Associate Professor

私たちの研究室では、線虫C. elegansを使って、神経系において動物の行動が決定される仕組みを明らかにしようとしています。線虫の神経系は302個の神経細胞で構成されており、全ての神経間のシナプスを介したネットワーク構造が完全に明らかにされています。また、全ての神経細胞についてそこで発現している遺伝子が網羅的に調べられています。このように線虫の神経系について膨大なデータが蓄積されてきていますが、それだけで神経回路での情報処理の仕組みが理解できるわけではありません。例えば、線虫はたくさんの匂いを嗅ぎ分けて好きな匂いを選びそちらに寄っていくことができます。神経回路の構造を見ても匂いの情報を運ぶ経路は無数にあって、どの経路が行動の決定に働くのかは分からないのです。動物が神経回路でどのように行動を決定するのか、膨大なデータを活用しながら私たちが行なっている研究を紹介します。


過去の公開講座

2013年(平成25年)第12回:川畑, 市川
2014年(平成26年)第13回:伊藤, 池ノ内
2015年(平成27年)第14回:射場, 寺本
2016年(平成28年)第15回:谷村, 佐竹
2017年(平成29年)第16回:矢原, 高橋
2018年(平成30年)第17回:舘田, 祢冝
2019年(令和元年)第18回:釣本, 粕谷
2020年(令和2年)第19回:斎藤, 手島
2021年(令和3年)第20回:松尾, 仁田坂

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