1985年 名古屋大学理学部生物学科卒



新しい複製開始制御システム

ATP結合型DnaAタンパク質が複製開始を起こす。 その後、DNAポリメラーゼが複製反応を進める。その際、DNAに結合したクランプ因子(リング型タンパク質)がHdaタンパク質と複合体を形成する。この複合体はDnaA-ATP加水分解活性をもつ。生じたADP-DnaAは複製開始能がない。よって過剰の複製開始が抑制され、一回性複製が維持される。

 
 DNA複製研究を志す。分子遺伝学の威力に感銘する。
1985-1990年 京都大学大学院理学研究科生物物理学専攻
 京大ウイルス研究所遺伝学部門にて大腸菌分子遺伝学を学ぶ。
主として、dnaG(プライマーゼ)遺伝子の発現制御機構とdnaA(複製開始因子)遺伝子の機能制御機構を解析する。
複製開始制御メカニズムに関し、DnaAタンパク質の活性制御を中心に据えた新説を提唱する。一方、この研究を通じ、分子遺伝学の威力にも限界があると感じ、生化学研究の志向が芽生える。
そんな折り、Kornberg研から帰国したばかりの真木寿治先生(当時、九大医学部。現、奈良先端大教授)の研究発表には衝撃を受けた。
1990-1993年 米国スタンフォード大学医学部生化学学科
 Arthur Kornberg教授の研究室でポスドクとしてDnaAタンパク質の生化学的研究を行う。
1991-1992年は国際ヒューマンフロンティアサイエンスプログラムの長期フェローに採用された。DnaAタンパク質の活性制御機構を解析し、複製開始活性を特異的に制御する新たな因子が存在することを見出す。
1993-1994年 米国ジョージタウン大学医学部生化学分子生物学科
 立ち上がったばかりのElliott Crooke助教授(現・教授)の研究室にポスドクとして参画。DnaA制御因子の精製を進める。
1994年 九州大学薬学部微生物薬品化学講座
 分子遺伝学、生化学、分子生物学をかみ合わせた手法で、複製開始制御の研究を進める。1997年、DnaA制御因子の同定に成功し、新たな複製開始制御メカニズムを解明した(Cell,1998)
2002年-現在 九州大学大学院薬学研究院分子生物薬学分野(教授)http://210.233.60.66/~bunsei/
 複製開始とその制御のメカニズムをタンパク質構造動態から説明できるレベルで解明すること、未知の重要な制御因子を発見し新たな制御メカニズムを解明すること、複製フォークの制御的役割を解明すること、複製サイクルとDNA分配系(あるいは細胞分裂系)との連携機構を解明すること、などを目標としている。これらは、分子生物学の基本的命題であると同時に、医学薬学分野へのさらなる貢献にも必要である。
このような目標のため、分子遺伝学、生物学、分子生物学の組み合わせに加え、構造生物学やゲノム生物学の進展を積極的に取り込んでいる。
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