九州大学大学院

生体高分子学研究室

Protein Science and Cellular Biochemistry

キイロショウジョウバエトランスグルタミナーゼの機能研究

トランスグルタミナーゼ(TGase)は、タンパク質のリジン残基をアシル受容体、グルタミン残基のγ-カルボキシアミド基をアシル供与体とするアシル転移酵素です(図1)。この反応によって、タンパク質間にイソペプチド結合が形成され、哺乳類では、皮膚形成や血液凝固、アポトーシスなどにおいて、重要な生理機能を果たしています。無脊椎動物においては、カブトガニの外骨格タンパク質の多くがTGaseの基質であり、その多くがキチン結合性を有していること、ザリガニにおいては、TGaseが体液凝固に関与していることなどが判明しています。ヒトでは8種類のTGaseアイソザイムが報告されていますが、ショウジョウバエでは1つしか存在せず、TGaseの機能解析に優れたモデル動物といえます。

最近の研究により、ショウジョウバエTGaseは、発生段階特異的に発現しており、特に3齢幼虫と、成虫において顕著に発現していました。また、成虫では創傷によってTGaseの発現量が、創傷後2時間で約3倍に増加し、創傷治癒に関与していることが推定されました。全身でTGaseのRNAiを行うと、蛹の段階で大部分が致死となり、羽化率は約20%と減少するとともに、成虫になっても高い致死性を示し、羽化後30日で約90%が致死となりました。さらに、外皮においては、翅の水疱形成や腹部のメラニン化消失といった表現型が見られました(図2)。温度感受性変異体を用いて発生段階での機能を解析すると、TGaseは羽化前の形態形成において重要な役割を果たしていることが判明しました。

また、外皮のTGase基質も質量分析機により12種類のタンパク質が同定されました。これらのタンパク質について、全身でRNAiしたところ、7種類が致死となり、血漿中のタンパク質であるLSP2とキチン結合モチーフを有するCpr76Bdについては、腹部のメラニン化が異常になりました。致死となった7種類について翅特異的にRNAiを行ったところ、キチン結合モチーフを有するCpr97Ebについては翅が上方に曲がり、また、C 型レクチンドメインを有するClect27は翅脈の一部分(前横脈)が消失しました。

TGaseによる架橋様式
図1:TGase によるタンパク質の架橋形成
TGaseノックダウン系統の表現型
図2:TGase を RNAi によりノックダウンした個体の表現型と生存数
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