九州大学大学院

生体高分子学研究室

Protein Science and Cellular Biochemistry

組換えタンパク質を利用したカブトガニ体液凝固カスケードの分子機構の解明

カブトガニの体液は、免疫担当細胞としてわずか1種類の顆粒細胞を含むため、自然免疫の分子機構の研究には大きな利点となっています。顆粒細胞には多くの自然免疫に関与するタンパク質が貯蔵されています。この細胞の特徴は、グラム陰性菌の細胞壁の成分であるリポ多糖(lipopolysaccharide, LPS)に鋭敏に反応してこれらのタンパク質を分泌することにあります。LPSは、ヒトにおいても、自然免疫系を誘導する物質で、臨床的には注射液や透析液へのリポ多糖の混入は、過剰な自然免疫反応を引き起こすため重大な問題です。

分泌される成分のなかで特に重要なものが、体液凝固に関わるセリンプロテアーゼ前駆体(ファクターC、ファクターG、ファクターB、プロクロッティングエンザイム)と凝固タンパク質であるコアギュローゲンです。ファクターCはLPSに、ファクターGは、真菌の細胞壁成分であるβ-1,3-D-グルカンに反応して自己触媒的に活性型に変換されるユニークなプロテアーゼ前駆体です。活性型ファクターCは、ファクターBを活性化し、活性化型ファクターBはプロクロッティングエンザイムを活性型のクロッティングエンザイムに変換し、最後にクロッティングエンザイムにより、コアギュローゲンはコアギュリンに変換されてゲル化します。一方、ファクターGは、β-1,3-D-グルカンに反応して活性型のファクターGとなり、プロクロッティングエンザイムを活性型のクロッティングエンザイムに変換します。これらの反応をまとめて体液凝固カスケード反応といいます(図)。

最近になって、組み換えタンパク質の技術を用いて、これらのセリンプロテアーゼ前駆体を作ることができるようになり、詳細なカスケード反応の分子機構の解明が可能となってきました。また、これらの組換えタンパク質を応用した微生物の高感度検出法の研究開発も行っています。カブトガニの凝固カスケード反応の研究は、先代研究室から引き継いだ当研究室の独創的で世界に誇れる研究の成果のひとつです。

凝固カスケード
図:カブトガニの体液凝固カスケード反応
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