よくある質問

研究室配属や大学院への進学に関して、よく聞かれる質問とその返答をまとめました。

研究において、解剖の技術は必要ですか?不器用でも大丈夫でしょうか?
 大丈夫です。電気生理学的手法を用いた研究をする場合には、手先の器用さが要求されますが、全ての研究テーマにおいて必要なわけではありません。例えば行動観察実験では、ひたすら行動を録画して解析することで研究が成り立ちます。その結果だけで卒業研究論文や修士論文を書くことは、十分可能です。

 もちろん、手先の器用さに自信がある人も大歓迎です。その特技を十分に活かして下さい。
研究にコンピュータは重要ですか?
 はい。実験結果の解析や論文の執筆にコンピュータは欠かせません。それは、どの研究室に所属しても同じことでしょう。ただ、複雑な統計処理やシミュレーションは通常行わないので、普通にWordやExcelを使うことができれば、それで十分です。

 逆にコンピュータが好きな人には、コンピュータを活用する研究テーマも用意できます。希望者には、プログラミングを教えます。
虫が怖くて触れなくても、大丈夫でしょうか?
 問題外です。 大丈夫…な場合もあります。まず、食わず嫌いならぬ“触らず嫌い”の可能性があります。触ってみたら案外大丈夫かもしれません。また、人間は慣れる生き物です。最初は怖かったものが、日常的に接していると平気になることはよくあります。

 一般に、私たちが恐怖を感じるのは、その対象をよく知らないためです。例えば、交通事故の例からわかるように、車はひとたび暴走すれば大変危険な存在です。しかし、車自体に恐怖を感じる人はあまりいません。それは車の仕組みを知っており、どんな状態の車が危険かを理解しているからです。よく見知っている危険に対して、私たちは恐怖を感じるのではなく、冷静に警戒して対処します。

 昆虫のことも、よく知れば知るほど怖くなくなり、むしろ愛着が湧いて来る…かもしれません。
昆虫の行動の神経機構を研究することは、何かの役に立つのですか?
 率直に言えば、何の役にも立ちません。ただ、それは短期的な視点で見た場合です。長い目で見れば、何かの役に立つ可能性はあります。

 例えば、1971年にRowellという人は、バッタにおいて動き刺激に応答する視覚性ニューロンを発見し、DCMDと名付けました。その後RindやSimmonsらの研究によって、DCMDは衝突刺激を検出するニューロンであり、逃避行動の開始に関わることが明らかになりました。現在は、その衝突検出の仕組みを応用して、車の衝突事故を防ぐシステムが開発されています。

 では、Rowellは衝突事故を防ぐ事を目的に、研究を行ったのでしょうか?決してそうではありません。この例のように、基礎研究は後年予想もつかない形で応用されることがあります。しかし、始めから役に立つ事を期待して研究しているわけではないのです。

 そもそも、物事を何でも役に立つか立たないかで分けて考える生き方は、あまりお勧めしません。世の中には損得以外の価値判断基準がある、ということを知って下さい。
卒業生は、どんなところに就職が決まっていますか?
 卒業生の就職先は、地方公務員、フランソア、ANA子会社、アース製薬関連会社などです。つまり、就職先は様々で特に昆虫に関係した職に就いているわけではありません。研究テーマが就職に与える影響は少なく、むしろ個人の資質が重要なのでしょう。ただ、昆虫の行動の話は素人の方にも比較的理解しやすく、少々変わっているという点で、採用試験の面接において(良くも悪くも)注目されるかもしれません。

番外編

研究室選びに迷っています。何を決め手にすべきでしょうか?
 純粋に研究テーマで選ぶのが本来のあり方ですが、相性というものを考慮することを薦めます。例えば、長時間野外で動物の行動を観察することに苦痛を感じる人は、生態学の研究に向いていないでしょう。一方、よく物を落として壊すような人は、電気生理学の実験には向いていません。

 人によっては、「好きなこと」と「得意なこと」が異なる場合があります。この時「好きなこと」を優先することは、時としてとんでもない不幸を生み出します。献身的だが技術は絶望的に未熟な看護士と、やる気はあまり感じられないが技術は確かな看護士だったら、どっちに面倒をみてもらいたいでしょうか?

 研究手法との相性だけでなく、人との相性も大事な要素です。卒業研究や大学院の指導は、教員によって一対一で行われます。弟子入りするようなものです。師匠には、信頼のおける人物を選ぶべきなのは言うまでもありません。しかし、人格的に問題がなくても、なんとなく馬があわない、ということがあります。性格の長所と短所は表裏一体です。例えば、面倒見がいいということは、細かくあれこれ指図されることを意味します。おおらかで細かい事を気にしない人は、やることが大雑把でいい加減です。前者の方が性に合う人もいれば、後者のほうが居心地がよい人もいます。

 では、大雑把な人は大雑把な師匠を選んだ方が良いのかというと、話はそう簡単ではありません。互いに異なるタイプの師弟のほうが、相補的に働いて上手く行く場合があります。反対に、互いに理解できず険悪な関係になる場合もあります。

 結局のところ、相性の良い人を見極めるための効果的な方法はありません。最終的には自分の勘を頼りにするしかないので、常日頃から人を見る目を磨いて下さい。

動物生理学研究室では、どんな研究を目指しているのでしょうか?
 私(山脇)個人は、既知の重要な問題を解くというよりは、まだ誰も手をつけていない面白い問題を発見することを目指しています。問題を発見することは、それを解くことに劣らず重要です。例えば、フェルマーの最終定理を証明した数学者の名前は知らなくても、フェルマーの名前は聞いたことがあるのではないでしょうか。

 もちろん、そんな大発見は未だにしていませんが、唯一無二の研究を目指して日々努力しています。変人 世界中で誰も行っていない研究をしてみたい人や、独自の研究アイディアを持つ人は大歓迎です。